Monday 16 February 2015

letter.15 最後のコーヒーブレイク

 



どこに行くにも必ず最後には喫茶店・カフェを見つけて、お茶をしていた学生の頃の私の旅。

"coffee"  "tea"  "cafe"
私の知る数少ない英単語がそれらで、見つけるとぐっと安心した。


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ルーレオにもそういうカフェが1件あって、スウェーデンらしいラスベリーフレーバーの紅茶とシナモンロールを食べた思い出がある。
なんてことない小さなカフェなのだけれど、妙に印象に残っていた。

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滞在3日目のこと、街を歩いていて迷っていたら、通りすがりのお兄さんが道を教えてくれた。

その道には見覚えがあって、もしかして…と辺りを見回す。

はやる気持ちを抑えながら、あの道へ。

やっぱりそうだった。
あのカフェだった。

残念ながら日曜日でお店は閉まっていたけれど、見つけてしまった嬉しさといったら。


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火曜日にカフェのドアを開けてみる。内装は変わっていたけれど、おそらくメニューはほとんど変わっていないと思う。コーヒーを1杯と前と同じくシナモンロールを食べた。

結局、その日から毎日通ってしまった。2回目に訪れた時に気が付いたのだけれど、2種類あるプレートのうちの1種類は5年前と同じだった。


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あいにくの曇り空の今日、最後のコーヒーを。体調が優れなかったので、シナモンロールではなく小さなクッキーを1つ添えてもらって。

いつも優しく接してくれる、店員のお兄さんに、さようならを言ってお店を後にした。

あたたかで、良い時間だった。


 H.

2015.2.17 tues
cafe Lina 1番奥のソファー席にて


letter.14 遠い誰かの幸福を





この教会はどこにいても見える位置にある。凍った海の上からも、街の中心部からも。

晴れた日の午後、夕方のような橙色の光に照らされる瞬間がとても好きで、その時間に通るようにしている。

誰かの幸せをそっと祈りたくなる。


H.

2015.2.16 mon
Luleå domkyrkaの帰り道にて



letter.13 Söndag stångt






日曜日のルーレオは、本当に静か。
お休みのカフェやお店も多く、人の通りも少ない。ファーストフード店でさえ、ゆっくりと掃除してからの10時開店である。
ありきたりな表現だけれど、その静けさは時が止まってしまったかのよう。


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土曜日が賑わいの1番のピーク。
先日はバレンタインだったこともあり、街の中心はとても賑わっていてた。お菓子の量り売り場では、たくさんの人がお菓子を袋に詰めていたし、デパートの中のカフェを覗くと行列が出来ているほどに。

それに比べて、今日は本当に静か。
皆それぞれお家で休日を過ごしているのだろうか。

営業時間の短さや、日曜日がお休みの潔さ。時には不便に感じるかもしれないけれど、そういうのも悪くないなと思う。


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ふとアルゼンチンのブエノスアイレスでは日曜日はお祭りのようにとても賑やかだったことを思い出して、ふふっと1人で笑ってしまった。


私も皆と同じように早めに散歩を切り上げて夕ごはんを食べて、こうしてのんびりと日記を書いている。その土地のリズムに合わせて。

今日は早めに、お休みなさい。


 H.

2015.2.15 sun
ホステル ベットの中にて


letter.12 光の窓辺






窓辺を見ると安心するのは、以前訪れた時と変わらない。


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ここ数日、朝8時にはホステルを出て、行ったことのないエリアへ向かい家々を見る。

スウェーデンの家は窓が多くて、決まって窓辺にはランプと植物、写真タテ等が置いてある。それが置いていないのなら、人は住んでいないのだろうと思うほど。

夜になると、ぽっとその灯りたちが目立って、時々中の人の姿が見える。
ヒッチコック監督の映画"裏窓"みたいに、私もその人たちの姿をこっそりと覗き見たりする。
人が生活しているということは、とても安心することなのだ、と そっと思った。

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1日が終わってしまうことが、とても名残惜しい。寒いけれど、じっと太陽が沈む姿を見て、そして灯りがついている家を見て安心してホステルに戻る。


朝が来るのが待ち遠しくて、1日が終わってしまうのが名残惜しい。


どこに居てもいつでも、そういう1日を送れたら良いなと思う。

そして、皆の生活もそうであればと切実に願う。



 H.

2015.2.14 sat
カフェの帰り道にて



Friday 13 February 2015

letter.11 おやつの誘惑



この旅に出る時は、美味しいものをお腹いっぱい食べようと思っていたけれど、普段は小食なのであまり食べないだろうと思っていた。

それでも気が付いたら、私は毎日おやつ含めてたくさんたくさん食べている。

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朝は5時に目覚めてシャワーを浴びて、朝ごはんにオートミールとヨーグルトとバナナを。

散歩をしてる途中に小腹が空いたら、おやつ。

ホステルに戻ってきて、お昼ごはんとおやつ。

散歩の帰り道に、カフェでおやつ。

夕食は野菜スープを作って、おやつ。

といった具合に。
もちろんそれぞれのおやつは高カロリーなものではなく、ちょっとした果物やナッツなどである。
雪道のせいか、少し歩くととても体力を消耗するのだ、と1人で言い訳をしてみる。


でも思っていた以上に、スウェーデンの食べ物が美味しいのである。



シナモンロールは、ほんの少しだけ温めると信じられない位に美味しくなる。カフェよりもスーパーマーケットの方が食感が固めな気がする。
(スーパーマーケットで100円位)






knäckebröd(クネッケブレッド)と呼ばれるクラッカー。ジャムやクリームチーズ、サーモン、オリーブなど何かを乗せても美味しいけれど、私はそのままザクザクバリバリと食感を楽しみながら食べるのが好き。
(スーパーマーケットで160円位)






興味本位で購入した冷凍食品。
日本でも冷凍食品は食べた事がなかったので、どんなものかと食べてみると意外と美味かったりする。種類も豊富で、3種類ほど食べ比べをしてみたけれど どれも美味しかった。これで350カロリーとはまたヘルシー。
(スーパーマーケットにて350円位)




そして、このサラダ。
私は"エリートサラダ"と呼んでいる。

基本的にスーパーマーケットはCOOP(コープ)にて買い物をしているけれど、時々ICA(イーカ)に浮気をする。というのもこのサラダがあるから。

10g 10クローナで好きな野菜を自分で選んで取って、パックに詰める。パックのサイズは大きくて直径20センチほどで深さもある。価格的にはあまり安くはないけれど、慣れない土地で落ち着くまでは。
駅の待合室で食べている人もよく見かけたし、お昼時になるとこのパックを持っている人をたくさん見かける。


中東、タイ、中国、韓国等の食品を取り扱うお店も2件ほどあり、日本食品も販売をしていた。お寿司屋さんもルーレオ内に数件あり、外から覗くといつも賑わっている。

スーパーマーケットでもサーモンのお寿司を見かける。私が"あ、お寿司だ"とじっとお寿司を見ていたら、横からおじさんに『これ、皆大好きだぜぇ!』と大きな声で話しかけられたことも。


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基本的に、スウェーデンの食べ物は健康志向のヘルシーなものが多いように思う。ヨーロッパ全体に言えることだけれど、バナナやオレンジ、リンゴなどは必ずと言って良い程コンビニエンスストアにあるし、若い男性もふとした合間に食べている。関係があるかは分からないけれど、何故だか皆タッパーのお弁当を持っている。


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それでも、おやつとなると話は別で。
シナモンロールも大きなチョコボールも、今の時期にしか見られないセムラと呼ばれるお菓子も、高カロリーと高糖質のダブルパンチである。

無造作に置いてあるパンが何故か美味しそうに見えて、どれ1つと手に取って食べたくなる。

さらに、小さなコンビニエンスストアやスーパーマーケット、どこへ行っても必ず、当たり前のようにお菓子の量り売りがあるのには参ってしまった。誘惑が多すぎる。普段は食べなくても、皆が美味しそうに食べていると無性に食べたくなる。

コーナーの一角にズラリと並ぶお菓子たち。びっくりしたのは大きな大きな紙バケツ?にお菓子を詰めていたこと。若い男性も、女性も家族も皆。

私も少しだけ、ちまっと入れて購入てみる。買ったのは"japanese mix"と "wasabi nats" というもの。名前の通りで日本のおかきとワサビ味のおかき。ツンと鼻にくる感じがとても美味しい。



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自分でも驚くほどに随分と食べれられるようになった。
特に"美味しい"と感じて食べられるようになったことは大きい。

その話も、またいつかの機会に。

美味しく食べられることは本当に本当に幸せだ、と改めて思う。

夕食は大人しく、野菜のスープを。


 H.

2015.2.13 fri
ホステル キッチンにて








letter.10 ホステルにて





今居るホステルでは、相部屋に泊まっている。このルーレオ市内の中で、おそらく1番、しかも群を抜いて安いホステル。

全部で9部屋あって、いつもレギュラーで居るのは3人。

時々、誰かが入ってくるけれどすぐにチェックアウトしてしまう。
もともとじっくりと長居する観光地ではないことと、冬ということもあり観光客が訪れることも多くはないのだ。

同じ部屋には2人。
"プロテインくん"と"靴下さん"。
勝手にニックネームを付けて、心の中でこっそりと呼んでいる。

8番目の部屋に居る、"8番さん"。

おそらく皆スウェーデン人で、ここで仕事をしているよう。

プロテインくんは、
チェックインして部屋に入った時に、プロテインの袋が床に置いてあって、一体どんなムキムキな人だろうと想像してビクビクしていたら、普通に背の高い好青年だった。

そして靴下さんは、
洗濯ものをとても綺麗に畳んでいることがとても好印象だった。かなりガタイが良い男性だけれど、優しい声の持ち主である。

この2人はいつも金曜日の夜から日曜日のお昼までホステルに戻らないので、きっと土日は自宅に帰っていると推測。

最後に8番さん。
初めはお客さんだと思っていたけれど掃除をしている姿を見かけるので、スタッフさんかもしれない…と数日後に気が付いた。


オーナーのおじいさんは別の部屋にいて、あまりホステルの方には入らない。
ほとんどがセルフサービスで、はじめは戸惑ったけれど、それならそれで好きにやろう、とキッチンやら洗濯機やらを使用したりしている。
(今まで色々なホステルに泊まったけれどこんなにセルフサービスなのも珍しい)

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スウェーデンのお家のほとんどがそうなのかは分からないけれど、コンロなどは電気のよう。







そして、ヨーロッパではよく見かける"セントラルヒーティング"と呼ばれる暖房器具。

寒い寒いスウェーデンだけれど、家の中は本当に暖かい。
私は寒さには非常に弱いので、日本でもぜひ欲しいと思い以前調べたことがあるけれど、家全体をそういう作りにしないと難しそうであった。残念。

そんなこんなで、とても快適に過ごしている。



 H.

2015.2.12 tues.
ホステル キッチンにて


letter.9 リンゴと私と海の上



先日、ソリに乗ってからというもの、楽しくて楽しくて、今日もまたソリに乗ろうと意気揚々と外へ出た。


最低気温は−20℃近くだと言うけれど、それでも昨日今日と暖かく、あれだけ積もっていた雪も少しだけ溶けて、地面が見えていた。

天気も良い。


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ソリ乗り場は3つあって、宿から2番目に近いソリ乗り場へ向かう。
けれど少しだけ氷が溶けていて、すれ違いになったおじさん2人に、"別の場所からの方が良いよ"と教えてもらう。

ここでは歩いていてそういう少し危ない場所があると、すれ違う人が必ず教えてくれる。そして親切に安全な場所へ導いてくれるのだ。

海沿いをずっと歩いて、別のソリ乗り場でお礼を言って別れる。
(偶然にもこの2人には翌日にも会う)


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カバンをソリに乗せ、滑り始める。









所々にベンチがあるので、
リンゴを食べつつ、休憩しつつ。






また滑る。
スケートを履いて勢い良く滑っている人もいれば、ベビーカーを引いてゆっくりと歩いている人も。

こんな楽しい道を、毎日散歩出来るなんて。なんて素敵なのだろう。


でも時々、ヒヤリとする場所も。
氷が少しだけ溶けている場所は透けていて、通るのが怖かったりする。








下を見ながら歩いていると、落ち葉を見つけたりする。誰かの落とした手袋や、犬のフンなんかも。(最後に掃除をするのかしら?)

数ヶ月後には溶けてしまうから、きっとそれらも海の底へと消えてゆくのだろう。

よくよく考えると、凍った海の上でリンゴをかじっていた瞬間も実に不思議で。でも可能なことなのだなぁとなんだか感心してしまった。

世界はまだ、知らないことだらけだ。


 H.

2015.2.11 wed
Luleå 海上のベンチにて




Wednesday 11 February 2015

letter.8 今日という日



旅先で帰りたいと思ったことは、今まで1度もなかった。本当に。

例え辛い状況でも、帰りたいというよりは、今この現状からどうにかして抜け出したいという気持ちの方が強かった。
だから、友人が言っていたホームシックということも、上手く理解することが出来なかった。



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それでも今朝。
ふと目覚めた布団の中で私は"あ、帰りたいかもしれない"と思った。
日本を出て1週間近くになる今日。

宿のおじいさんにはチェックイン時に怒鳴られるし(意思疎通が出来なかっただけでお互い悪くない)、宿の布団は新しいものでないし、カフェで頑張って言葉を話そうと思っても上手く通じなくて少しだけ悲しい思いをしたり。
自分の気持ちも固くなって、色々なことや人やものが怖くなってしまう。
全てにおいて、ぎこちなかった。

たった4日間の昨日までのことを思って、布団の中でぎゅっと体を縮こませる。


その間に、窓の外は明るくなっていく。昨日よりも空は明るかったので、なんとなくこれから快晴になるのだろうと思った。

それが分かったから、布団から出て、朝ごはんを食べて、身支度をして外に出た。


いつもより風が暖かくて、なんだか今日は良い日になるかもしれないと、そう思った。



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海へ行って、少しだけソリに乗って滑って、大きなスーパーマーケットを見つけたのでじっくりと商品を見たりした。



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それから帰り道、ついにあのカフェへ寄ってみた。
内装が少し変わっていたけれど、メニューはおそらくほとんど変わっていなかった。
前と同じようにコーヒーとシナモンロールを頼んで、前と同じような席に座った。


ふわふわとするような、とても優しい時間を過ごして、なんだか気持ちが軽くなる。


お店を出る頃に、パラパラと雨が降っていたけれど暖かかったから全然気にならなかった。


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それから宿に戻って、おじいさんにチェックアウトするまでの宿代を支払う。今度はきちんと意思疎通ができて、おまけに少し安くしてもらった。



今日の気候のおかげもあるかもしれないけれど、少しだけ春に近づいたような幸せで優しい1日だった。





今日を乗り越えたから、
きっともう大丈夫。


H.

2015.2.10 thu
ホステル ベットの中にて

letter.7 曇りのち



天気の良くない今日。
日が当たらない日は随分と寒く感じる。そして、そんな日はどこかやっぱり気持ちも塞ぎ込んでしまう。
少しだけ散歩をして、スーパーマーケットへ寄り、食材を購入してすぐに戻ってきてしまった。




次の行き先への下調べをしたり、
夕食の為のサラダの作り置きをしたり。

ホステルのキッチンでぼんやりとする。



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夕方の5時頃。
ふと窓の外に目をやると、曇り空から一転、鮮やかな夕焼け空に変わっていた。

慌てて身支度を済ませ、外に出る。

夕日の見える海沿いへ急ぐ。











ポケットに手を突っ込んで、日が沈んでしまうまで、ずっと見ていた。



H.

2015.2.9 mon
Luleåの湾岸にて




Tuesday 10 February 2015

letter.6 少しづつ思い出す



朝の9時ぴったり。
暖かい格好をして、ホステルを出る。

ドアを開けた瞬間に、冷たい風が吹きつける。慌ててジャケットのジッパーをぎゅっと口元まで上げる。

雪は相変わらず積もっていて、さらに地面もスケートリンクのように凍っていた。






滑らないように気を付けて歩いて、海があったと記憶する方へ向かう。
(気を付けていても今日で4度は滑っている。まわりを見渡しても滑っているのはなぜか私くらい…なぜ…)


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昨日、気付いてしまったのだけれど、前回来た時には海だったと記憶する場所が、海ではなくなっているのだ。


凍っている。


大事なことだから、2度言ってみる。


凍っているのだ。


ずっとずっと歩いて、海へ出れる場所があったので降りてみる。
周りにはチラホラとソリを持って歩いている人たちも見かける。
そして、なんと、スケート靴を履いてそのまま勢い良く滑って行く人も。









入り口には、無料で貸し出しをしているソリもある。
私も滑りたかったけれど、今日は体を休める日と決めたので、また後日、存分に滑りたいと思う。


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少しづつ思い出しつつある、場所の位置関係。

前回訪れた時、最後にお茶をしたあのカフェも見つけてしまった。

その話はまた後日に。


H.


2015.2.8 sun
ホステル キッチンにて
温かいコーヒーを飲みながら

Sunday 8 February 2015

letter.5 長い長い日々の終わり



朝4時30分に起きて支度をし、ルーレオ駅へと向かう。
ここもきちんと街に灯りがついていて明るいので、迷うことなく駅へ到着。

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列車とバスを乗り継ぎ向かう先は、ヨックモック・ウィンターマーケット。

年に1度、スカンジナビア半島北部に住む先住民サーミ人が集まり工芸品を販売する、今年でなんと410回も開催されている歴史あるマーケットなのである。(昔はトナカイの取り引きの為のマーケットだったそう)

雪の降る2月にルーレオへ来たかったので、せっかくなら見に行こうと向かったのだった。










ちょうど最終日の今日。
到着すると、すでにたくさんの人で賑わっていた。

トナカイのツノや革で作られたアクセサリーやカバンが並べられている。お菓子や蜂蜜も売られていたり。人気のお店は覗く隙間がないほど、人で賑わっていたりする。

サーミの衣装を着た人も時々見かける。全身民族衣装の人もいたけれど、こちらはラフな格好。








お店を見ていると、1時間ほどで足がカチカチと冷たくなり、指先がもげそうなほど。
すぐ近くのスーパーマーケットに避難して、また歩いては、温める。

暖かいジャケットを買ったので上半身は耐えられる。ただ、足先が耐えられない。皆は平気そうで、特別な靴を履いるのだろうかと思うほど。それでも中にはトレーナーだけの薄着の人もいるし、羨ましい限りである。

寒かったけれど、見れて良かった。





今日で慌ただしかった日々もようやく終わり。長かった。明日からはゆっくりと日々を送ろうと思う。

今夜はただただ、静かに眠りたい。


H.

2015.2.7  sat
Jokkmokk bstn - Murjek stn - Luleå Cへ向かう列車 23番席にて

Saturday 7 February 2015

letter.4 深く確信したこと



Sundsvall C という名前の駅で目が覚めたのは午前3時。貨物列車がいくつも並んでいるこの駅で、列車はしばらく停車した。

他の街もそうだけれど、オレンジ色の電気が街全体についていて、静かだけれど明るかった。そして決まったように、家々の窓辺にはランプが置いてあってポツンと灯りがついている。

それを見て、"あぁそうだった これが私の好きなスウェーデンだ"と思い出す。スウェーデンは、そういう細かな1コマが印象に残っているし、そういうところが好きなのだ。


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次に目が覚めたのは、空の青色が少し薄くなり、少しづつ朝に近づいているのだと感じる頃だった。

大きな丸い月が空に浮かんでいて、メレンゲのような滑らかな雪が街を覆っていた。












完全に日が昇り、列車に眩しい光が射し込む。
Boden C でほとんどの乗客が降りて行ったので、そのすきに食堂車へ向かう。コーヒーの値段を聞いたらフリーとのこと。普通ならお金がかかるけれど、(多分20クローナ)おそらくもう終点に近いから好きに持っていって良いとういことなのだろう。


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ルーレオ駅に着いたのはお昼前。
明日はさらに北を目指すので、インフォメーションのおばさんに手伝ってもらい、ルーレオからの往復チケットを無事購入。


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ストックホルムは曇りだったけれど、今日のルーレオは綺麗な青空だった。

雪が積もる道をカバンを引きずりながら、宿へ向かう。


その間、私は心の中で深く深く確信していた。


やっぱり、
やっぱりルーレオはとても美しい街だったのだと。 


H.


2015.2.6  fri
Luleå  ホステル内のベットサイドにて




letter.3 記憶と共に



午後10時40分。
ストックホルム中央駅から出発の夜行列車に乗り込む。
雪が降る中、定刻通りに列車は出発した。それと同時に、ようやく目的地へ迎えることにほっとする。


これから向かうその街は、実は以前にも1度訪れたことがある場所。
当時その街の名前以外は、何の情報も持っていなかった。
そして1度訪れたにも関わらず、どこに何があるかといった詳しいことは知らない。

それでも、
また向かうには理由がある。

それは訪れるきっかけとなった
" Luleå [ルーレオ] "という街の名前が、やっぱりとても美しいと思うからだった。


:


4年前ルーレオへ向かったその始まりは、とても不思議だった。
この旅と同じように夜行列車に乗った私は、列車の中でチャンさんという北京出身のおばあちゃんと知り合った。


『あなた日本人?』

『あなたもルーレオに行くの?』

『ホテルを予約していなかったら、
うちに泊まらない?』


ルーレオにもうすぐ着くという30分前。出会って3つ目の言葉で、そんなお誘いを受けたのだ。
私は私でルーレオはそんなに大きな街ではないとふんでいて、泊まるところも特に調べてはいなかったので、ありがたく誘いを受けることに。(後で知ったけれど、ルーレオは空港もあるわりと大きな湾岸都市だった)

けれど、私が誘いを受けたのはそれだけが理由ではなかった。
実は、話しかけられる前から私は彼女を遠くから見ていたのだ。
それは小柄な彼女が淡いピンクのコートを羽織っていて、マフラーも、手袋もピンクだったから。そして、隣の席に偶然居合わせたであろう男性と、とても楽しそうに談笑をしていた姿を見て、なんだかとても可愛らしい女性だなぁとつい目がいってしまったのだ。
そんなだったから、隣にちょこんと座られて、話しかけられた時はびっくりとした。小説や映画みたいなことがあるのだと。

そうしてひょんなことから、彼女の家に3日間お世話になることに。
あまり会話はしなかったけれど、彼女のおかげで3日間、私は暖かくして安心して眠ることができた。





揺れる列車の中、目を閉じて訪れた時の事を思い浮かべてみる。

早朝の眩しいくらいの雪の白さ、
夕焼けの橙色に照らされた協会、海に浮かぶ 3つ子のような3艘の船、凍った湖とその周辺の木々のシルエット、世界の果てのような海の冷たい空気、家から漏れるあたたかな灯り。


それはどれも溜息が出るくらいに、美しい記憶ばかりだった。

H.

2015.2.5  thu
Stockholm CからLuleå Cへ向かう夜行列車 96番席にて


letter.2 リトライ?ストックホルム !



5年前の冬。
私はコペンハーゲンにいて、そこからストックホルムへ、そしてさらに北を目指そうと地図を見ながら計画をしていた。

けれど乗り継ぎが上手くいかなくて、1泊する予定だったストックホルムでは、寒くて暗い中央駅の中で日の光を見ることなく、丸1日をベンチに座って過ごして終わったのだった。

なので、この旅の始まりストックホルム。今回も宿泊はしないけれど、
リトライ!ストックホルム!なのである。









成田からイスタンブールで乗り換えてやって来たストックホルム。時刻は午前11時30分。ここまでもかなり長かったけれど、ここからも長い待機時間がある。

バスに乗り、空港から中央駅へ。
中央駅のコインロッカーに荷物を預けて、今夜10時40分にストックホルムを発つ夜行列車のチケットを購入。

眠くて眠くてたまらない疲れきっている体に鞭を打って、さっそく街を散策。

と、思ったけれど寒すぎる。
寒すぎて、思考が止まるくらい。
少し歩いては小さな売店に入り体を温めるを、繰り返し、迷い、結果また中央駅に戻ってきてしまった。

時刻はまだ午後3時。
列車の出発時刻まで7時間以上もある。

本当は、少し遠くにある植物園やキャラメル屋さんへ行きたかったのだけれど、あまりの寒さに断念。寒さにはとても弱いのである。

シナモンロールとコーヒーを買って、ベンチに座る。
やっていることは結局5年前と変わらず、リトライ!ストックホルム!とはならなかったのであった。




ストックホルムの写真を1枚だけ。


H.

2015.2.5 thu
Stockholm central station
バスステーション2階ベンチにて