Thursday 30 April 2015

letter.37 春、暖かな雨が降る





朝、静かに雨が降った。
それでも気温は少しだけ暖かく、春の雨のにおいがした。温水プールでたゆたっているような、私の好きな雨。

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冷蔵庫の中をカラにして、部屋を掃除した。ハンカチとシャツにアイロンをかけて、クローゼットの中にかけていた洋服も畳んでキャリーバッグにしまった。

それから、私を救ってくれたビオラを数個摘んで、押し花にした。

明日の午後ここを発つナポリ行きのチケットを買って、いつものbarでカプチーノを飲んでから さようならを言った。

今夜は特別にリストランテでディナーを。

そして、部屋でコーヒーを飲んだ。
ルーレオで買ったICAの270gのインスタントコーヒーは最後の夜にピッタリと終わった。

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最後に1日を満喫出来る日をどうやって過ごそうか、いつも悩む。
今日は晴れていなくて良かった。静かな日で良かったと思う。


少しだけ嬉しい日曜日になったのは、私も皆と同じく、幸せの紙包みを持って歩いたから。


H.

2015.3.15 sun.
アパートのキッチンにて

Wednesday 29 April 2015

letter.36 すくすくと





この島に来て驚いたことは、植物の生命力の強さ。
アスファルトの隙間から出てくる植物もたくさん見かける。



アロエは私の背丈よりも大きく、初めて見た時は 正直ゾッとしてしまったくらいに大きい。




そして花や果物も。
見た時は"何だろう?"としばらく考えて、キウイだと分かるのにとても時間がかかったり。(買って食べたらいつものキウイたった) 逆にリンゴは小ぶりのものが多く不思議だったり。




庭先に植えられているレモンも、日本で見かける3倍は大きいものも見かける。




バラや椿、水仙も咲いているのだけれど、1つ1つの花が大きくたくさん咲いている。


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もしも、私が家で育てているベンジャミンを持ってきたらどうなってしまうのだろうなんてことを考えてしまう。

もしかして…、なんて。


H.

2015.3.14 sat.
地図に載ってない通りにて

Sunday 26 April 2015

letter.35 夜、バスに乗って





基本的に夜は出歩かないようにしている。日本でもそうだったけれど、どうしても起きていられない体質で、今まで眠くならずに徹夜が出来たのは、人生で1度だけである。
旅先では全てが自由時間なので"早寝早起き、3食ごはん"を自然とこなしている。

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19時頃に日が暮れるので、その前にシャワーを浴びてごはんを食べる。そして、日が暮れてからはお茶を淹れてベランダで通りと行き交う船を眺める。

夜から営業するお店もたくさんあるので、通りは昼間よりも賑わいを見せている。


ベランダからの眺めは、
左手にフェリーの発着場所。




右手にバスの発着場所。



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バスが行き交う様子を見ていたら、なんだか急にバスに乗りたくなる。
チケットは手元にある。
パジャマの上にダウンを羽織って、バス乗り場へ。C2の島を一周するバスに乗り私はバスの1番後ろの、後方を向く1人用の椅子に座った。

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昼間と同じく、狭い道を勢い良く走る。揺れも激しくキシキシと窓の軋む音がする。

坂の上から見えた、街灯のオレンジ色が目立つ夜のコッリチェッラ。暗闇の中に小さく光るキリストの像。ポツリポツリと光っている街灯が現れては消えてを繰り返している道。まるでジェットコースターに乗っているように、瞬間的に景色が変わってゆく。

何が何だか分からないうちに、またバスは港へと戻ってきた。私はお礼を言ってバスを降りて、アパートに戻った。

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13日の金曜日だからか、最後に切った玉ねぎがなぜか1番新鮮で綺麗にスライスできたからか、スフォリアテッラの中身がオレンジピールではなかったからか。
時々、いつもと違った夜を過ごしたくなる。


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バスの出発を待っている間、電気のついていない車内を見ると全員がカラフルに光る小さなメリーゴーランドを眺めていたのが妙に印象的な不思議な夜たった。

H.

2015.3.13 fri.
アパートのベットにて

p.s
翌日もバスに乗ったのだけれど、バキバキバキっと凄い音がしたと思ったら、バスが止まって、運転手さんが"やっちまった!"というように叫ぶ。後ろを見ると、停められた車のサイドミラーが無くなっていた。
ふと、先ほどバスを降りたおじいさんと目が合った。おじいさんは、あっと気が付いたように笑顔で『コンニチハ!』と日本語で言って去って行った。なんだかものすごい不思議な時間だった。


Friday 24 April 2015

letter.34 春の1人昼食会





緑のバジル・白のチーズ・赤のトマト。イタリアの国旗はいつもこれ3つにしか見えないのは、きっと私だけではないはず。

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"イタリアでは食事にお金をかけることは当然だ!"と思って入国した。


北イタリアはベネチアの観光地位しか行ったことがないので、あまり比べられないのだけれど、南イタリアは外食費が安いように思う。BARの店先に並ぶ おやつは基本的に1つ1ユーロ。ピザも持ち帰りならば1枚1ユーロ。エスプレッソは0.50から1ユーロ。カフェラテ、カプチーノも1.50ユーロ前後ほど。エスプレッソが1.80というお店もあったりするので、基本的にの話。

ただ、イタリアではcaffeと言えばエスプレッソのことでクイッと飲んですぐにお店を後にする人が多く、アメリカンを頼んでもエスプレッソと同じ大きさのカップで出てくる。カフェラテもわりと小さめカップ。私にとってカフェは時間を買う為に利用するものなので、なんとなく長居しにくいのもまた事実。

(余談だけれど、スウェーデンでは1杯のコーヒーやお茶を頼むとお代わりが出来るというとてもお得なシステムがあった)

それでも、元々レストランで食事をしたりすることが苦手なので、気軽に持ち帰ることが出来てとても助かっている。


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日曜日はお店がほとんどが閉まっているので、土曜日の午前中に必要なものを買い出しする。平日は1時前に。

有名な話だけれど、イタリアのスーパーは棚 1列分を埋め尽くしているのがパスタというほど種類が豊富で、そして必ず量り売りのお肉売り場とチーズ売り場がある。そこで皆好きな量を購入していく。

島には思っていた以上に商店の数が多い。野菜はあの八百屋さんで買って、飲み物はあの商店で買って、というように私は物ごとで購入するお店を分けている。でもほとんどは島内で1番大きくて1番安いスーパーマーケット(それでも日本のコンビニエンスストア位の広さ)でまとめて済ませることも多い。


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春になって、天気も晴れの日が続く。そこで、気になるものや好きな食材を購入して、手間も暇もかけていない1人昼食会を開催。


ビオラの下から、反時計回りで紹介。

ライムのジュース。
(商店で0.70ユーロ)
ワインは安いものは1.5リットル1.50ユーロほどで販売している。残念ながらお酒は飲めずワインも詳しくないので、ライムジュースを。果肉が入っていて、さっぱりしている。



サラダ。
(八百屋さんで1ユーロ/200g)
イタリアに来て嬉しかったことの1つが、野菜や果物が安いこと。小麦粉も同時に安いので、街で見かける食べ物は小麦粉主役のものがたくさん。美味しいけれど、見ているだけでお腹いっぱいになるのもまた事実。なので、野菜が高くなくて本当に良かったと思う。

八百屋さんやスーパーマーケットで販売している、パックに詰められているサラダが安くて量があって大変良い。
調べてみると、"インサラトーナ"と呼ばれるイタリア式サラダがあるらしく、夏のランチには、この山盛りのインサラトーナとパンだけで済ます人も多いとのこと。きっとこれも、そのインサラトーナ用のサラダに違いない。
旅先で1人だとレタス等の葉物類を切って保存するのはあまり簡単なことではないので、本当にありがたい。パックされている野菜の種類はお店や日により様々。1パックで3食分ほどの量。



モッツァレラチーズ。
(スーパーマーケットで2.19ユーロ/6つ)
グラムで買えるチーズ売り場のすぐ横に、チーズモッツァレラチーズ専用の棚があった。モッツァレラチーズは特別なのだろうか。



ミニトマト。
(商店で0.50ユーロ/1kg)
購入した帰り道、小腹が空いていたので1つもぎって口に入れたら肉厚で驚く。しっかりした食感があって、酸味と甘みのバランスが丁度良い。

人参の千切り、レタス、コーン等が入ったサラダに、ミニトマトとオリーブとモッツァレラチーズを乗せる。そして、バルサミコ酢とオリーブオイルのドレッシングをかけて。



ピザ。
(パン屋さんで1.30ユーロ/1枚)
初めて購入した日は、円型だったけれど、近頃はずっと四角型ピザ。その法則を考え中。ピザはピザでもパン屋さんのピザのパン生地はふわふわタイプでピザ屋さんのピザ生地は薄くてモチモチタイプ。その日の気分でタイプを選んでいる。

ちなみにパンと言えば、基本的にイタリアで見られる食パンは小さく10cm角ほどで23枚入り1.20ユーロ。私にとっては丁度良い大きさ。ぜひ日本でも販売して欲しいくらい。



カチョカヴァロ。
(スーパーマーケットで3.15ユーロ/2つ)
1度食べてみたかった、ひょうたん型のチーズである。オリーブオイルをしいたフライパンで軽く焼いて、ラスクに乗せて。きっと人生で最初で最後のカチョカヴァロ……うまし。



デザートにはイチゴ。
安くて甘くて美味しい。ただし、イチゴ買う時は、お店や状態を吟味する。痛みが激しいハズレもある。

そして、食後にはコーヒーを。
ご馳走様でした。


H.

2015.3.10 tues.
キッチンにて

Thursday 23 April 2015

letter.33 友達増えた月曜日



島では、窓辺やベランダ、庭先に花がたくさん植えられているのをよく目にする。そのせいか、お花屋さんや園芸店も多い。










時々通る道に、島の中ではわりと広めの園芸店兼ペットショップがある。
この島に着いた日も私はこのお店を訪れたし、2、3度は足を運んでいる。にも関わらず、1度も店員さんらしき人を見ていない。

その道は狭いのにバスや車が通り、人が通れるスペースがほとんど無い位に本当に狭いので、あまり通らないようにしていた。
けれど、その道にはレモンとみかんの木、エニシダの黄色い花が咲き誇るとても綺麗なお庭があって、今日はそれを見たくて久しぶりに通って見た。そのお庭に行く途中に、園芸店はあるのだ。

久しぶりに覗いてみると、若い女性がいる。初めて店員さんを見た。

挨拶をして園芸店の敷地内へ。サクランボの木や小さな花も咲いている梅の木もある。それからもちろんレモンの木も。
サボテンはどこのお店も種類がたくさんあるけれどここも例外ではなく、立派なサボテンがたくさん置いてあった。


お花はそれほど数は多くなく、バラ、シクラメン、ガーベラ、パンジー、ビオラ等が少しずつ置かれている。
その中で私の好きなレモン色のビオラが1つだけあった。なんだかとても嬉しくなって購入。0.60ユーロ。安い。
(20ユーロしか持っていなくて崩してから買おうと思ったら、親切にも崩してくれた)

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買い物を済ませて、鉢のままだけれど、いつもごはんを食べているキッチンのテーブルの上にビオラを置く。

以前に友人も言っていたけれど、植物が身近にあるって、なんだかやっぱり心強い。





昨日はとてもセンチメンタルになってしまったけれど、もう大丈夫。



p.s
プローチダではよく、家の前に名前の書かれた飾りが吊るされているのを目にする。これは"赤ちゃんが生まれましたよ"ということなのだと思うのだけれど、つい先日"viola"と書かれたものが飾ってあった。楽器の方のヴィオラかもしれないけれど、可愛らしい素敵な名前。


H.

2015.3.9 mon.
ビオラとコーヒーとキッチンにて

Tuesday 21 April 2015

letter.32 日曜日は嬉しくて、少し寂しい






晴れた日曜日。
この日は皆、リボンの付いた大きな紙包みを持って歩いている。包まれているのは、たくさんの焼き菓子。そのことを確信したのは、この島に来て3度目の日曜日の今朝8時30分、いつものお菓子屋さんでだった。

日曜日だけは、ショーケースはお菓子でいっぱいになり電気もついている。

それが分かってからその姿を見ると、なんだかとても愛しいような微笑ましい気持ちになる。


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土曜日の昨夜は、このアパートを貸し出しているオーナーのDaniel(ダニエル)さんがローマからプローチダ島に来てくれ、ありがたいことに夕食をご馳走になった。

3時間ちょっとだったけれど、たくさん話をして、私にとっては本当に久しぶりにとても楽しく笑ったり誰かと会話をした3時間だった。

(アパートに居れば、ホテルのような受付もないので、誰かに挨拶をすることもない。もちろん2週間も居れば、Barの店員さん達や港の人達とも挨拶を交わすようにはなるけれど、私はイタリア語が本当に分からない。だから挨拶程度しか会話が出来ない)


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とてもよく晴れている今朝早くローマに戻るダニエルさんを見送って、フェリーに手を振った瞬間、涙が出てきた。見送るという行為は、いつでも苦手。それまでは孤独でもなく平気なのに、一気に孤独の波が押し寄せる。

フェリーが 小さくなって、そして見えなくなってしまったその後は、ゆっくりと島を散歩をする。それでも歩いていて色々なものを目にしていたら、なんだかたまらない気持ちになり、結局2時前にはアパートに戻ってきてしまった。

コーヒーを淹れて、通りを見下ろす。けれど、この時間は皆家でお菓子でも食べているのか、人の通りはほとんどなかった。

しかたなく、私は海を見ながら、先ほど散歩中に目にした光景を思い出していた。
皆お菓子の入った紙包みを持って歩いていて、平日のお昼は学校の為あまり見かけない子供たちと、子供と手を繋いだお母さんをたくさん見かけた。車に乗っている家族のお母さんの手にも紙包み。そしてお昼時だったから、ごはんの良い においもした。
そして思い出しては、また涙した。


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晴れた日曜日、日本でも私はいつもほろほろと泣きながら日が当たる土手を歩いていた。
地元の土手の芝生には、家族連れの人たちがたくさんいて、ごはんを食べたりしている。

まぶしい光の反射だとかその幸せそうな雰囲気だとか、芝生のにおいだとか、なんだかもうその一瞬一瞬の全てに胸がぎゅっとなってしまう。
そうした光景が、私にとっては幸せ過ぎてしまうのだ。

よく、カメラの光の露出原理を、水の入ったグラスで例えられる。光が多すぎるとグラスの中の水が溢れて露出オーバーになるというもの。まさに感覚はそれと同じ。


今日は、それにプラスして、きっと寂しさと羨ましさと、色々なことが入り混じってしまったのだと思う。


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食器を洗い、洗濯物も取り込んで少し落ち着いた頃、夕方の光を浴びたいと思って、バスに乗る。乗客は私1人だけだった。
いつも通るみかんの木の横を、海の横を、パン屋さんの横を、狭い道をすり抜けて。午後4時の光の中、バスはガタガタと音を立てながら走る。

このやがてなくなってしまう、日曜日の光を名残惜しんで、ゆっくりと瞬きをする。

そうして終わった、私の日曜日。


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"今日は1日良い天気になるよ"

別れ際、ダニエルさんが空を指差してそう言ったように、今日は風も強過ぎず、本当に気持ちの良い1日だった。きっと多くの人がそう感じていたと思う。お昼の散歩の時に見た光景も、バスの中から垣間見た光景も、幸福そのものだった。

来週は、私も、もっときっと楽しくて愉快な日曜日を。


H.

2015.3.8 sun.
アパートのキッチンにて


Sunday 19 April 2015

letter.31 ポケットの中には、みかんが2つ





海外で売っている柑橘系のくだものは、とても香り高い気がする。
街中で誰かが食べているとすぐ分かるし、食べ終わった皮からも爽やかで甘い香りがする。

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プローチダ島でもみかんの木がたくさんあって、八百屋さんでもたくさん売っている。
オレンジと言うより、本当に日本で売っている"みかん"そのもの。小ぶりなものがほとんどだけれど、時々、その中に場違いな大きさのものが混じっていたりする。

私もよく買って、右のポケットにひとつ、左のポケットにひとつ入れておいて、散歩の途中のちょっと疲れた時なんかに食べている。

私の好きなおやつのひとつ。


H.

2015.3.6 fri.
アパートのキッチンにて

Friday 17 April 2015

letter.30 ナポリで気付いたこと1つ






sfogliatella (スフォリアテッラ)
以前お伝えしたあの、パリパリふわふわのナポリの焼き菓子である。

初めて食べて感動を覚えた場所が、プローチダ島のお菓子屋さん。
どこへ行っても美味しいと思っていた。ナポリへ行くならば、食べ比べをしてみようと、Barへ。
スフォリアテッラを頼むと、ふわふわのスフォリアテッラが出てきてしまった。というのもスフォリアテッラは、パイ生地ではないバージョンの2種類あるのだ。美味しかったけれども、違う。これは先日の話。


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本日、気を改めて別の店先に並んでいたスフォリアテッラを頼む。

そしてひと口。これはなんだか違う。まず、パリパリ食感がなく生地が分厚い。噛み進めてもその生地が口に残る。そして生地は生地、クリームはクリーム、とそれぞれバラバラになっている。食べるのにとても時間がかかってしまった。
そして食べた後、翌日まで胃もたれが続いてしまった。


"そんなことって…"としばらく呆然としてしまった。何かの間違いかと思い、胃もたれしながらも、今度はお菓子屋さんで頼んでみた。
(パクパク食べるけれど結構命懸けであったりする)1.20でほんの少しお高い。

食べてみると、今度はパリパリ食感がする。やっぱりさっきのお店が美味しくなかっただけなんだと思ったのも束の間。食べ進めようとするとスルスルスルっとパイがほどけてしまった。さらにパイ生地の内側にはジワリと油が滲んでいる。そしてこのスフォリアテッラも、生地とクリームの間に空洞かありバラバラになっていた。

もう1つ食べ比べてみたかったけれど、さすがに無理だった。

スフォリアテッラはもともとそういうものなのかもしれないし、定義もそんなに無いのかもしれない。それでも、いつも食べているあのおじさんのスフォリアテッラは本当に美味しい。
まず胃弱な私が全く胃もたれせず、"もう1つ"と食べれしまうくらいに軽い。そしてどこから食べても、パイ生地が崩れることなく最後まで綺麗。
薄くパリパリのパイとふわふわのクリームの間に空洞はなく、一体化している。だから同時に別々の食感を楽しめる。

味に細かい方ではないし、物凄く癖のあるもの以外に好き嫌いもそんなにない。

それでも、やっぱり、やっぱり。
あのプローチダ島のスフォリアテッラは抜群に美味しい。


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さて、フェリーのチケットを買ったし、雨上がり、虹の刺す夕方のナポリを出港。再びあの美味しいスフォリアテッラのあるプローチダ島へ。


H.

2015.3.5
napoliからprocidaへ向かう船の中にて


Tuesday 14 April 2015

letter.29 ナポリへ小旅行





写真に関するいくつかの理由があって、1度ナポリへ行くことにした。

決めたのは朝8時。理由は晴れていたから。
すぐに1日分のあれこれをサブバッグに詰めて、チケット売り場へ。丁度、1時間後のフェリーのチケットを手に入れる。

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1時間はすぐに過ぎた。
それでも待てど暮らせどフェリーはこない。チケット売り場へ行くと、"もう行ってしまったよ" イタリア語とジェスチャーで言われてしまう。そして、返金をしてくれた。
"そんな…ずっとここでまっていたのに"と一生懸命伝えると、どうやらフェリーではなく高速船だったらしい。
いくつか船の会社があって、1番安い会社がcarmer。そのcarmerは安いからフェリーしかない思っていたのだ。
私の勘違いで返金をしてくれてありがとうと心の中で伝えながら、次の便のフェリーのチケットを購入。

時間があったのでごはんを食べて、余裕を持って船着場へ。


けれど、私がプローチダ島を出る頃には、雲行きは怪しくなってきた。

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そしてナポリに到着して宿を見つけた直後の夕方5時頃には、雨も振ってしまった。


少しだけ周辺を歩いて、帰宅。

久し振りに人の声を聞きながら、ベットに横になる。なんだか小旅行に来ているように不思議な感覚の中で就寝。


H.


2015.3.4
napoli ホステル ベットの中にて


Sunday 12 April 2015

letter.28 理想のドーナッツ現る





ちょっとしたお茶の時間やおやつの時間が好き。そして私の1番好きなおやつは、ドーナッツである。
プリンやチョコレート、アイスクリームも好きだけれど、"おやつ"と言われて真っ先に浮かぶものは、ドーナッツ。もう、あの形からしてずるい!

甘いものや炭水化物を控えているのだけれど、意外なことにドーナッツは平気なのである。


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私がいつも立ち寄るお菓子屋さんがある。
平日のショーケースの中にはギッシリとではなく、こじんまりといくつかのお菓子が並んでいる。どれも生クリームでコーティングしたものやフルーツを使った色鮮やかなものではなく、クッキーなど小麦粉が主役のものが多い。
電気が付いていないことも多く、付いていたとしても暗いので、輝く宝石のような日本のケーキたちを想像してはいけない。失礼ながら、料理が苦手なお母さんが作ったように、形もいびつだったりするものも多い。


店先にはいつも"sfogliatella (スフォリアテッラ)"と呼ばれるナポリ名物の焼き菓子が置いてある。それが本当においしい。

薄く何枚も重なったパイの中に、滑らかでふわふわしたリコッタクリーム、アクセントにオレンジピールが入っている。パリパリパリッとした食感の後にすぐふわふわの柔らかい食感。そして優しい甘さと柑橘系の爽やかな香りが口の中に広がる。もう、幸せの味なのである。


月曜日の今日、お店を覗いてみると、昨日はたくさんあったお菓子たちがなくなっている。"日曜日は各家でお菓子を食べるのかもしれない"なんてことを思っていると、端の方に並べられたドーナッツたちが目に入る。いつもは置いていないのに。
揚げたドーナッツにグラニュー糖をまぶしたシンプルなもの。サイズはまちまちで大きいものから小さいものまで。気になったけれど、"私にはスフォリアテッラがあるから…"と購入はしなかった。

それでも帰り道、気になって気になって買ってしまった。
おじさんが大きいのを取ってくれようとしたので、慌てて「ピッコロ!ピッコロ!(小さいやつ!小さいやつ!)」と言って1番小さいものを取ってもらう。1つ0.50ユーロ。



無造作に紙袋にポイっと入れられたドーナッツを持って、小走りでアパートに戻る。コーヒーを淹れる為のお湯を沸かすその間、待ちきれなくてひとくち食べてみる。
思っていたよりもずっとずっと軽くて、ふわふわと柔らかい。美味しい。



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著名人のドーナッツに関するエッセイを集めた"なんたってドーナッツ"という本の中で、スタイリストの岡尾美代子氏が、かしこまったドーナッツの話をした上で"ドーナッツは私にとってB級なる食べ物"というような事を言っていた。私にとってもまさしくそういう存在なのだ。

素朴で、単純で、だけど美味しい。


理想のドーナッツは1つ、プローチダ島で発見した。

H.

2015.3.2 mon.
アパートのキッチンにて


p.s
ミニドーナッツを見たのは滞在中、2度だけだった。気まぐれ?まぼろし?ドーナッツなのであった。


Thursday 9 April 2015

letter.27 I believe in my god...maybe.






『"あなたは神様を信じる?"』

以前にも日記に書いたことがあるけれど、数年前トルコの小さな村で出会ったイラン人の女性に、唐突にそう聞かれたことがあった。

その時 私は答えられなくて、そっくりそのまま彼女にその質問を返した。

英語はあまり話せないと言っていた彼女がじっと真っ直ぐこちらを見据えて、はっきりと、

『"私は信じているわ"』

 と言ったことは今でも忘れられない。


神様が"いる"のか、"いない"のかは色々な意見がある。宗教の違いを差し置いても。

いるのかもしれなくて、私たちに試練を与えているかもしれない。
いるのかもしれなくても、ただ見ているだけかもしれない。
そして、いないのかもしれない。
…等々。

耐えられる人にしか試練を与えないという言葉もあるけれども、耐えられなくて亡くなってしまった人が大勢いることも事実であるし、試練というには残酷過ぎることをされた上、亡くなった人もいる。

外国で会った人々は、本当にストレートに"神のご加護を"と言う。そのひとしきりの真剣な眼差しに私はどきりとする。なぜ旅に出て神様や宗教のことを考えるのかと言うと、そういうことを言う人間に出会ったり、そういう光景を目にするからだ。


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近頃私がよくその事について考えるのはとても単純な話で、いつも通る坂道にとても愛らしい少女のようなマリア様のポスターが貼ってあるから。その道だけでなく、至る所に小さなイエス・キリストがいる。立体的な像であったり、ポスターであったり、絵画であったりその姿は様々である。

教会も多く、外観では分からないけれど実は教会だったという所もあれば、"Y字路"や"T字路"の別れ道の中心に位置していたり、1つの拠点になっていたりする所もある。



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私は神様が見ているからという理由で悪い事をしない訳ではないし、自分自身が努力して成功したことに対して神様のおかげとも思わない。
それでも、口に出さなくても八百万の神は自分の中の奥底にはあるし、相変わらず飛行機の離陸着陸は物凄く祈る。

やっぱり答えなんて出ないし、もやもやと頭の中には考えがあるのだけれど、きっと上手く言葉には出来ないと思う。それは多分、国を挟むと神様は神様でも信じる対象やそのもの自体の考え、定義が異なってしまうからなのだけれど。

もしも彼女とまた再会をしたら、彼女は1度会っただけの私の顔なんて忘れていると思うから、また同じ質問をするかもしれない。

その時はどう答えようかと、時々考える。


「"私は私の神様を信じてる、多分"」


とても曖昧な回答で文法的にも間違っているかもしれない。相手が困る回答かもしれない。
それでも、こんなとこだろうか。



ただ私が思うのは、目に見えないものを強く信じて生きるのはとても凄いということ。


H.

2015.2.28 sat.
via vittorio emanuele にて

Tuesday 7 April 2015

letter.26 幸せの坂道を抜けて



島は大まかに分けて、
3つの集落に分かれている。


Marina Grande (グランデ)



ナポリやイスキアなど、船の行き来や船の数が1番多く、いつも賑わっていて都会的な雰囲気。大きなスーパーが2件あるのもこの港の近くである。
島の北側に位置しており民家自体に日が当たることはなく、洗濯物は日光で乾くというよりも、風力で乾いている。


Marina Corricella (コッリチェッラ)



この島の観光名所でもある港。観光地のわりには漁師さんがのんびりと漁の準備をしていたりと3つの港の中で1番素朴な雰囲気。民家は高密度に入り組んで建てられていて、高さもかなりある。
マリナグランデ港の丁度裏手、東に位置し、日の出から日の入りまで常に日が当たる。


Marina Chiaiolella (チアイオレッラ?)



この港のみ読み方が分からず。
すぐ裏手にビーチがありリゾート地のような雰囲気で、他の2つの港に比べて圧倒的に高い建物が少ない。家の階段の数も少ない。そして、玄関を覗くと玄関横にシャワーが付いているお家が多かった。(家に入る前に泥や砂を落とすのかしら?)
島の南西に位置しこちらも割と1日中、日が当たる。

私はどの港の雰囲気も好きで、いつも島を歩いて1周する。朝9時頃アパートを出て、色々と寄り道をしても午後1時前にはアパートへ戻ってこれる。とても小さな島。


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その帰り道。
とても好きな坂道がある。黄色のエニシダの花が咲き乱れて、大きなアロエとサボテンがある坂道。海も見える。











そして近くには、みかんとレモンがたくさん実っている木がある。

そこだけなんだか1番春が訪れているようで、ふわふわとした気持ちになる、大好きな道。

好きな港をまわって、この坂道を通って、おやつを食べて、またアパートへ戻ってくるそんな毎日。


H.

2015.2.27.fri.
via romaにて